情報共有の種類とそれぞれの効果の高さ

 情報共有は組織において大事であることは確かだ。問題は、情報共有は種類によって質も目的も違う。これを知らないまま、情報共有を行おうとしても期待した以上に生産性が上がらなかったというガッカリ感を味わうことになる。今回は2014年のメタ分析を参考に細かい定義づけと、それぞれが生産性に与える効果を一枚の表にまとめた。



 情報共有に関する研究はさまざまな分野で行われている。今回は、組織産業心理学、認知心理学、社会心理学、組織行動学など多くの専門分野の知見を借りる形となるため、それぞれ独自の定義づけが行われている。よく似ているが、細かい違いがあることを注意して見ていく必要がある。


上から見ていこう。最も高かった順から解説する。

  1. 個人からチームへの情報の共有 (information sharing):個人からチームに新たな技術や戦略の情報を共有すること。

  2. 認知的な合意 (cognitive consensus):チームが共有している前提条件、共通言語。共同体としての自覚なども含む。

  3. 先天的に共有する技術と知識 (shared mental models):チーム間で元からオーバーラップしている知識、技術、課題など

  4. 集団的記憶貯蔵 (transactive memory system):チームが共同で情報の記銘、保持、引き出すこと

  5. 後天的に共有された技術と知識 (team mental models):チームで既に共有した知識

  6. お互いの応援と励まし (group learning):チーム間でお互いに行動開始、ゴール達成を応援すること

 最も研究数が少なかったのは二番目の「認知的合意」であった。この項目に関しての調査人数自体は多かったものの、研究数としては二件のみということだったのでfail safe数は高いとは言えないだろう。

 非常に多くの分野にまたがったメタ分析となっているため、蓄積されたデータの数は十分であるとは言えない。しかし、進むべき方向にざっくりとではあるが光を照らしてくれているのは間違いない。今後、新たなメタ分析が出版されれば情報を更新するまでだ、それまでは推定現状でこの結果を正解扱いとする。


 この研究結果で最も参考になりそうなのは「個人からチームへの情報共有(information sharing)」である。この相関関係が最も高いこともあり、チームの情報不足を補うための個人からの情報提供はとても有効であるということだ。実際、これが機能している場面を度々目撃していることもあり、体感的にも納得できる結果である。

 また、二番目に相関していた「認知的な合意 (cognitive consensus)」も納得がいく。理念の共有、ルールの共有、チームエフィカシーなどの重要性は多くの人は理解できるだろう。個人個人がバラバラな目的と方向性を持っていると、内部崩壊を招くリスクが上昇するだけだ。


 反対に、意外とも当たり前とも思えたのが「後天的に共有された技術と知識(shared mental models)」である。この効果は下から数えたほうが早い。これはつまり、すでに共有された知識が今後も新たな現状打破につながる可能性は比較的低いことを示唆している。古い知識で太刀打ちできない問題は、新しい知識で乗り越えるしかないということだろう。


 最も意外だったのが、最下位だった「お互いの応援と励まし(group learning)」である。そんな馬鹿な、と思いデータ収集と検証方法を探ってみると意外なことが分かった。この項目だけ「学生セルフエフィカシー」のみを評価基準にしていたのである。セルフエフィカシーということは、もはやチームですらない。もしこれが「企業チームエフィカシー」であれは大きく結果は変わっていた可能性がある。その理由は二つ。


 一つ目が、グループラーニングがチームエフィカシーや生産性に与える影響は大きいことが分かっている。詳しくはこちらの記事心理的安全性は直接的に生産性を上げることはない。しかし、間接的な影響が大きい」で解説している。

 また、高頻度のウインセッションを行うことによる生産性の向上も分かっている。詳しくはこちらの記事フィードバックやウィンセッションが生産性に与える影響の視覚化」で解説している。


 次に、学生と企業とでは同じインセンティブの条件を整えても効果が大きく変わってくることが分かっている。学生と企業とではモチベーションが与える影響に差があるわけだ。詳しくはこちらの記事チームへの利益分配は生産性を高める。しかし目標達成能力には疑問が残る」で解説している。


 まだまだ今後に期待したい分野であったものの、少なくとも「個人からチームへの情報提供(information sharing)」と「認知的な合意 (cognitive consensus)」は推奨しても良いということは納得のいく結果ではないか。


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Q1 個人からチームに情報を提供するのは非常におこがましい行為である。謙遜こそ日本の美徳でもあるため黙っているほうが良い。これは正しいか?またその理由も述べよ。


Q2 「お互いの応援と励まし」は効果が小さいのでやるだけ無駄である。これは正しいか?またその理由も述べよ。


Q3 あなたが知り合いからの情報提供によって大きく前進した経験を思い出してほしい。意見を整えた上で、ペアでディスカッションせよ。




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