優秀な人材を採用し、有害な人材を見抜く方法

 会社であれ、組織であれ、優秀な人材が欲しいのは誰だって同じだろう。それと同じくらい重要なのは有害な隠れ問題社員を炙り出して入らないように組織を守りことだ。どちらも重要であることは間違いないが、どうすればそれを発見できるのだろうか。面接に自信があったとしても結局うまくいかなかった経験は誰しもあるはずだ。


 「いいや、ティール組織を目指している自分からしたらどんな人材だって輝ける場所を提供できるんだ!多様性、包括性と平等性は実現できるんだ!」と思い描いている場合、申し訳ないがそれは現実を知らない夢物語としか言いようがない。私もかつて、ティール組織を夢見てどんな人材だって居場所を提供できるような組織を目指した。しかし、私は大きな挫折を経験した。しかもそれも一度は二度ではない。


 「そんなはずない!数回のミスがなんだ、どんな人であっても居場所を作る方法は見つかる。絶対うまく行く方法があるはずだ!」と考えるのであれば、そのデータを出してほしい。業績と結果を出すことが求められる組織に関する学術的な研究分野において、残念ながらそのような統計的なデータを出せる人はこの世に一人として存在しない。ただし、例外として国家の運営に関してであれば多少興味深いデータは出ている。


 今回は国家に関してではなく組織の運営に関するテーマだ。同じ目標と理念を共有した従業員たちをマネジメントし、業績を上げて結果を出し、社内の競争と協調の釣り合いを常に維持し、心理的な安全性を担保した上で従業員のモチベーションを高めることが目的である。そんな組織を現実的に考えたときに、面接によるフィルターの重要性は無視できないと遅かれ早かれ気づくことになる。では、その面接手法に関して、一体どのようなことが分かっているのだろうか。


 メタアナリシスを参考に、優秀な人材を発掘するための面接手法の効果とランキングを二枚の表にまとめた。先に効果が低い順から解説する。


 実際はより多くの項目があったが、一部削って日本で特によく使われている面接手法のみに絞ってランキングを作った。全て決定係数(r^2)で計算。


まず、効果の低い順に並べると次の通りである。

  1. 教育年数による判断

  2. 仕事の経験年数による判断

  3. 勤勉性による判断 (five factor model)

  4. 紹介者への確認

  5. EQテスト

  6. 仕事のサンプルを実際に試させた時の出来による判断

  7. 大学時代の成績評価

  8. 誠実性による判断 (HEXACO Model、Integrity Testなど)

  9. 知能テストによる判断

 このランキングから見て分かる通り、最も参考にされている教育年数や前職の仕事の経験年数はほとんど当てにならない。どれほど当てにならないかというと、血液型占いで能力を判断しているのと同じくらい信憑性が低いかほとんど関係がない。つまり「大学までの最終学歴による判断」と「前職の経験年数による判断」は「コイントスによる判断」とほとんど変わらない確率でしかないということになる。これは面接という名を借りたギャンブルである。まだEQテストの結果だけで判断をした方が予測効果は10倍高い。と言っても、1%が10%になっただけであるが。


 最も予測妥当性が高かったのはIQテストである。知識の多さではなく、ワーキングメモリの高さ、処理速度の高さ、知覚統合の高さなどによる予測の方がはるかに優秀な人材かどうかが予測できると考えられる。高学歴だが無能な社会人、そんな人をたまに見かけることはあるかもしれない。それは「言語理解」が高く、それ以外の「ワーキングメモリ」「処理速度」「知覚統合」が低いパターンかもしれない。IQをざっくりと細分化すると以下の四つに分けられる。

  1. 言語理解

  2. 知覚統合

  3. 処理速度

  4. ワーキングメモリ

 単純労働ならそれほど高いIQは必要はないが、マネージャー職や経営者など知的難易度の高い複雑労働においては特に必要となる能力は2,3,4番である。最終学歴だけでは、2、3、4番が高いかどうかは判断がつけられない。しかしIQテストとなると隠しようがないため、残酷なほどその人の能力と将来性が炙り出される。



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 またもう一つ興味深い点がある。それはIQテストの次に予測妥当性が高かった「誠実性テスト」である。なぜこれがEQテストの倍近い効果があるかというと答えは単純である。「有害な社員」や「問題行動の多い社員」の入社を予防できるというのが大きい。数多くの先行研究で有害社員がいることの方が、優秀な社員を雇うよりも会社には莫大なコストがかかることが分かっている。


 有害な社員の特徴を簡単にまとめると以下の通りだ。

  • ルールを守らない、言い訳をしてルールを無視しようとする

  • 自分の問題行動でを改めるのではなく、他者や会社を変えようとコントロールしたがる

  • 盗む、モラハラ、パワハラをする

  • 不満と陰口が多く、不健全な根回しを行い有害社員を増やす

 全従業員の5%は有害社員であるという統計があり、優秀な人材を入れるよりも有害な人材を手放した方がよほど会社にとっては利益となることは数多くの研究で一貫して同じ結論が得られている。もし有害な社員がいる場合、心を鬼にして会社の未来を守るためにもどうにかして退職してもらおう。それがたとえティール組織であったとしても、有害社員を抱えるだけの贅沢をする余地はないはずだ。


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 続いて、効果の高い順に並び替える。それが以下の通りである。

 このグラフは、先ほどのグラフとは大きく異なる。それはなぜかというと、IQテストと組み合わせた上で効果が高かった面接の予測妥当性を相関関係として計算しているためである。


 つまり、IQテストはマストであり、それをした前提の場合はこれほどまでに大きく結果が変わるということだ。最も精度が高かった組み合わせは2トップの組み合わせであった「IQテスト」と「誠実性テスト」であった。つまり、複雑労働を行えるだけの能力を持っており、なおかつ誠実で倫理的に問題のある行動を取らないという夢のような人材である。このスター人材が多ければ多いほどその会社の未来は明るいと言える。また、将来的には足枷となる有害社員をこの面接フィルターで弾くこともできるため、気持ちよく安心して働ける夢のような会社を運営できるようになる。これこそ、ティール組織に近づく現実的な方法となる。


 しかし、これはあくまで面接手法に限っている。これ以外にも、企業文化、リーダーシップ、目標管理と設定方法、ストレス対処方法、作業環境の最適化、作業内容のリデザインなど数多くの場面で工夫する余地は残っている。面接さえ整えることができればもう大丈夫!というほど甘くはないということだ。


Q1 「最終学歴」と「IQテスト」とでは、有能な人材である可能性の特定につながるのはどちらか?その理由も併せて述べよ。


Q2 「前職の経験年数」と「誠実性テスト」とでは、有害社員である可能性の特定につながるのはどちらか?その理由も併せて述べよ。


Q3 「優秀な人材を探し出す」ことと「有害な人材を特定する」こととでは、どちらを優先した方が良いか?

その理由も併せて述べよ。


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